あらゆる角度から調査を進めるイヤイヤ研。さまざまなアイデアを出し合う中「子育てする県にイヤイヤは関係するのでは?」といった意見が浮上。そこで「都道府県別 イヤイヤ率」の調査を実施。すると、「今、うちの子はイヤイヤ期」と回答した割合のNo.1は断トツで長崎県。最も低いのは鳥取県となりました。もちろんイヤイヤ期は個々で感じ方が違うもの。でも、もっと深くイヤイヤ期を知るために、鳥取県と長崎県でイヤイヤ期と向き合うママさんにインタビュー。「イヤイヤ率」に県民性は関係しているのでしょうか?
「イヤイヤ期率」が最も低い鳥取県
鳥取県の県民性は控えめで内向的、粘り強くて勤勉。誰にでも親切で、率先してボランティアを行うと一般的に言われています。そのようなまじめな性質が「イヤイヤ率」の低さに関係しているのでしょうか? 鳥取県で生まれ育ち、お嬢さん(4歳*)の子育て中のカヨさん(仮名)に伺いました。
―― 「『イヤイヤ率』が最も低い鳥取県」、この結果どう思いますか?
「TV番組などではよく大人しいとか暗いとか言われています。本当かどうかわかりませんが、あるミュージシャンが鳥取でライブをした時、あまりのノリの悪さに途中で帰ったなんて話を聞いたことがあります(笑)。たしかに自分をさらけ出すことが苦手な人が多いとは感じますね。でも、それがイヤイヤ率に関係しているかというと、う~ん。生まれ育った環境で子育てしている方が多く、親せきやご近所の助けのもと子育てできているから、親へのイヤイヤ期の負担が軽減され、イヤイヤ率が低い結果になっているのはないでしょうか?」
なるほど、親せきやご近所のヘルプがイヤイヤ率の低さに影響を及ぼしているというのは一理あるかもしれません。
イヤイヤ率は低いといえども
イヤイヤ期は存在します
―― イヤイヤ率の低い鳥取県で子育て中のカヨさん。ご自身のイヤイヤ認識度合いや実情はどうなのでしょうか? やはりあまり感じていないのでしょうか?それとも??
「家で『リンゴが欲しい』という娘に『今ないよ』と言うと泣き叫ばれ、買い物先で『コレ買って』に『買わないよ』と返すと寝そべられ……1歳半から時には暴れて抱っこできないほどのイヤイヤ期に襲われました。娘と一緒に買い物に行けないほどの時期もあったほどです」
―― だけれど、カヨさんにとって深刻なストレスにはならなかったとのこと。それはどうしてでしょうか?
「娘が必死に訴える様子がかわいく思えて仕方がない。私にとっては笑いのツボなんです。カメラマンという職業柄かスマホでこっそりその様子を撮ったりすることもあります。イヤイヤが始まると、私は傍らにいるだけで気が済むまで泣かせます。長い時は30分間ぐずることもありますが、ただただ傍観する。早く買い物を終わらせたいし、次の用事も済ませたい。でも、大人の都合を押しつけたくはないんです」
―― カヨさんはお嬢さん誕生後ベビーマッサージの資格を取得しています。どんな効果があるのでしょうか?
「子どもの自己肯定感に効果があると聞いて始めたんですが、施術をうっとり受けている娘の笑顔に自分の方が癒される結果になりました。イヤイヤが収まった後には、仲直りのマッサージもします。子どもにとっても楽しい時間のようで、お腹が痛い時など『マッサージして』って言っていってくることもあります」
スキンシップはイヤイヤ撃退法のひとつ。マッサージは効果絶大なようです。
イヤイヤ期が
一段落した今思うこと
―― イヤイヤ研の調査によると4歳児になると「イヤイヤ率」は、「魔の2歳」児の半分以下になります。カヨさんの場合は?
「4歳を過ぎた頃から自分の意思をそれなりに伝えられるようになり、相互理解ができるようになりました。今は、娘のプライドを尊重して無理はさせない、私も無理をしないことを心掛けています。ママが楽をすることはとても重要だと思っているんです。例えば寝かしつけ。子どもが眠るまで待たずに、眠たかったら先に寝てしまう。何かあったら起こされますから、問題ないと思っています」
ママがイヤイヤ期になっては元も子もありません。程よい距離感を保つことも重要なようです。
「イヤイヤ率」断トツNo.1の長崎県
長崎県は開放的で楽天的、おおらかな気質の県民性。亭主関白主義の多い九州の中でも男女平等と一般的に言われていますが、「イヤイヤ率」の高さにその県民性が作用しているのでしょうか?「データを見て驚きました」と、語る幼少期のほとんどを過ごした長崎県で2歳(*)のお嬢さんを育てるカオリさん(仮名)に伺いました。
―― 「イヤイヤ率が最も高い長崎県」、この結果どう思いますか?
「たしかにサバサバした方が多い印象で、亭主関白の家庭は聞いたことがありません。家族のサポートの中での子育ても多いし、子育て支援センターも充実していて、いろいろな子育て中の悩み相談にも乗ってくれます。「イヤイヤ率」は高いけれど、持ち前のポジティブな気質でストレスを感じなかったり、軽減しようとしているのかもしれません。私の娘もイヤイヤ期真っただ中ですが、ママ仲間との会話の中で悩みを共有したり、一時保育を利用して自分の時間を過ごしたりと、イヤイヤ期と向き合いながらも、気晴らしの時間をもてています」
「イヤイヤ率」は高いけれど、「イヤイヤ対処ストレス」は低い位置づけ。楽観的な県民性がイヤイヤを認識しながらもストレスを感じさせないように影響しているのかもしれません。
1歳7カ月から始まった
イヤイヤ期
―― 長崎県の県民性通り明るく社交的な印象のカオリさん。カオリさんのお嬢さんのイヤイヤはどういった感じですか?
「洋服を着たがらない、お風呂に入りたがらないと思ったら、『ママダメ! 自分でする』って自分で洋服を着ようとしたがりもする。でもできないといった感じで始まりました。最終的になにがイヤなのかわからなくなって、収まることもあります。今は保育園に行きたがらなく、行ったら帰りたがらない。環境の変化に強い抵抗を感じるようです。でも少し経つと新しい環境に問題なく対応しています」
―― 子ども自身自分も原因が理解できていないイヤイヤ。 向き合うお母さんは大変です。乗り切り方は?
「とても寒い冬の日にコートを着たがらないなんてことも。もう、訳がわかりません。そういった理解不可能な行動はママ友との共有、共感が大きな助けになっています。『私だけじゃない、今は頑張るしかないんだっ!』って安心するとともに、勇気づけられますね」
イヤイヤ研の調査では「ママたちが実践するストレス解消法」第1位が「愚痴る」。自身が抱えている悩みや状態を吐露したり、共有することはイヤイヤ期を乗り切るうえで、とても重要なんですね。
イヤイヤしている場合じゃない!
もっと楽しいことがあることを
伝える
―― 日々さまざまなイヤイヤを仕掛けてくるお嬢さんと向き合うカオリさん。イヤイヤ対策法も聞きました。
「時間が許す限りとことん向き合って、つきあうようには心がけています。なかなかイヤイヤが収まらないときは、『保育園に行ったら滑り台が待ってるよ~』『お家に帰ったらアンパンマンに会えるよ~』とか、イヤイヤしてるよりも楽しいことを提案すると、スイッチを入れ替えますね。それでも、イヤイヤが止まらない時は放っておくことも。イヤイヤに飽きて自分から私に寄り添ってきて抱っこをねだってきたりします」
大人が旅行や買い物、スイーツといった「自分へのご褒美」を設けて仕事やイヤなことを乗り切るように、子どもにも楽しいことが待っていることを伝えることは有効なようです。
「イヤイヤ率」の違いから行ったインタビュー。県民性とイヤイヤ率の関係ははっきりとはわかりませんでしたが、イヤイヤ対処法にはそれぞれの県民性が表れているように感じました。粘り強いと言われている鳥取県民のカヨさんは、お子さんが泣きやむまで付き合う対処法。一方、社交的で開放的と言われている長崎県民のカオリさんは、ママ友と悩みを共有して安心したり発散したり。「私だけじゃない、今を乗り切ろう」と楽観的に気持ちを切り替える対処法。イヤイヤ対処法に県民性が表れるように、血液型や職業の違いも対処法に関係するかもしれませんね。
*インタビュー時(2018年3月)の年齢
イヤイヤ研は、次世代育児アイテム「ペチャット」と
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イヤイヤ期にも効果あり!?
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持つ家族の生活に関する
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